友人ヤスが統合失調を発症した話4〜メール攻撃
「そんなの、音消して気にしないようにしてたらいいじゃん」
当時ヤスからのメールに参ってきた僕にマッチャンは言った。
言うように音を消して無視したりもしていたのだけれど、それでも携帯を見るたびに未読が数十件もたまっており、その内容が支離滅裂で鬱々としたものだと、気が滅入るのだ。
その気持ちはマッチャンにはわかって貰えなかったのだけれど。
「ごめん、お前の気持ちわかった。しんどいわこれ」
ヤスからのメールが毎日入るようになったマッチャンは僕の苦しみがようやく伝わったようだった。
ヤスからのメールはどういうのかというと。
【ねえ】
【話を聞いてほしい】
【毎日頭がぐちゃぐちゃだ】
【それでもどこかは冷静だから余計辛い】
【生きるの辛いやつじゃん、ってなってる】
【俺のこと、だれもしらないところへいきたい】
【それかきえたい】
これは僕が仕事中の平日昼間、約10分間に受信した7通のメールだ。当時はまだLINEじゃない。
ねえ、だけとかがメールでくる。
で、仕事が終わると未読が30件。相手をするまで続く。下手するとガンガン電話がかかってくる。
実際受けてみないとわからないがこれが毎日毎日続くのは、だいぶしんどい。
LINEじゃなくてよかったのかもしれない。既読がついて無視されるともっとヤスは騒いだだろう。
だろう、だなんて言っているが、実はこれは推測じゃない。実際、そうだった。
今は割愛するが、ヤスはつい最近も数年ぶり二度目の発症をし、現在僕にガンガンLINEを送ってきている。
それで、家に行ってなすすべも無くただ帰宅し、メール攻撃を受けまくってた僕はその後、どうしたかというと、1人でヤスの実家へ向かうことにした。
僕はヤスの実家の電話番号は知らなかったが、ヤスの実家に遊びに行ったことはあったし、ヤスの父親とも面識があった。
ヤスのお父さんになんとかしてもらおうと思ったのだ。家族なら家から引っ張り出して精神病院へぶち込んでくれるかもしれない。
僕もマッチャンも、一応メールや電話でヤスにそれとなく精神病院を勧めたりはしたのだけれど、ヤスは断固拒否していた。
久しぶりに訪れた、ヤスの実家の一軒家。
電気は消され、雨戸が閉められている。
チャイムを押してみたが、電池が切れているのか、鳴らなかった。
「すみませーん!」とドアを叩くなどもしてみたが一切返事がない。
最初から読んでくれている人が1人でもいたら展開がなくて大変申し訳ないが、僕はまた、ただ無駄足を踏んだのだ。